「都立中高一貫校の受検で小学校の成績が良い子が有利って聞いたけど本当!?」「関係あるとしたらどのくらいの影響があるの?」「うちの子の成績で大丈夫かしら?」
…と思っている方もいるかもしれません。
今回はそんな疑問に答えるべく、報告書について解説したいと思います。
都立中高一貫校は、適性検査の得点と報告書の得点の合計の総合得点が高い順番に合格者を決定します。
報告書とは小学校の先生に書いてもらう書類、つまり、学校の成績です。
この記事では、はじめに報告書について解説し、報告書の得点がどれほど合否に影響を及ぼすのかを私なりに考察していきたいと思います。
報告書とは?
都立中高一貫校の受検では出願時に報告書の提出が求められています。
報告書とは、小学校の担任の先生に小学5、6学年の成績を点数化して作成していただき、出願校に提出する書類です。
各校の募集要項には、報告書の得点を適性検査の得点と合計する方法がしっかりと記載されています。
点数化されるのは、国語、社会、算数、理科、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語の9教科です。
5学年と6学年のそれぞれ1年分の9教科を3段階評価で点数化します。
つまり2年間×9教科=18個の評価の総合得点が報告書の得点となります。
この得点を、適性検査の結果に加えて、上位から合格者を決定していく、というわけです。
したがって、小学校5、6学年の学校の成績は合否に影響を及ぼすのは事実、です。
学校の成績が良い子にとっては朗報ですが、成績があまり良くない子にとっては不安材料ですね。
学校の成績に自信がない場合、どんなに適性検査を頑張っても合格できないのではないか?と思ってしまうかもしれません。
この問いに答えるためには、悪いと言ってもどれほどの成績なのか、志望校はどこなのか、適性検査でどのくらいの結果が出せそうか、などの要素を総合的に考えなければなりません。
では、ここからは報告書の得点がどれほど結果に関わってくるのかを、考えていきたいと思います。
まずは、事実として何点ほど総合得点に影響を与えるのか、をみていきましょう。
総合得点中で報告書の得点が占める割合
はじめに、総合得点中で報告書の得点が占める割合、について解説します。
総合得点中で報告書の得点が占める割合はどの学校も適性検査の得点7~8割に対し、報告書の得点が2~3割です。
なぜ幅があるのかというと、割合は各校によって異なっているからです。
それぞれの学校が採用している計算方法が違うためにこのような差が生じます。計算方法は、毎年9月頃に各校から出される募集要項によって詳しく説明されています。
令和4年度(2022年受検) の募集要項をみると、最も報告書の得点の割合が高いのは3割で、桜修館、大泉、富士の3校です。最も報告書の割合が低いのは2割で、南多摩、三鷹、白鷗、両国の4校です。
単純に考えれば、学校の成績の影響をできるだけ抑えたい場合、報告書の得点の割合が低い学校から志望校を選択する方が良いわけです。
各校で異なる報告書の点数の算出方法
さらに、実は、出願する学校によって、同じ成績でも報告書の点数そのものが変わるのです。
各校で3段階評価の配点が違うため、報告書の点数にこのような差が生じます。
これらの配点についても募集要項に細かく書いてあります。
が、配点通りに合計した後、その合計点に各校で指定された係数を掛けて報告書の点数に換算する、という面倒な算出方法のため、募集要項に載っているそのままの点数のままでは複数校を比較しにくいのです。
ですので、総合得点を1000点に統一して、表を作ってみました。
次の表は令和4年度(2022年受検)の募集要項をもとに、総合得点を1000点としたときの、報告書の満点の点数、1つ 評定2(または 評定1)をとると何点減点されるのか、を計算して示したものです。(割り切れないものは小数点第2位を四捨五入してあります。)
令和4年度 | 総合得点を1000点としたとき | ||
学校名 | 報告書の満点の点数 | 評定 2による減点(1つにつき) | 評定 1による減点(1つにつき) |
立川国際 | 250点 | -6.9点 | -10.4点 |
南多摩 | 200点 | -5.6点 | -8.9点 |
三鷹 | 200点 | -5.6点 | -9.7点 |
桜修館 | 300点 | -5.3点 | -10.7点 |
白鷗 | 200点 | -5.6点 | -8.3点 |
大泉 | 300点 | -5.6点 | -13.9点 |
富士 | 300点 | -6.7点 | -13.3点 |
両国 | 200点 | -4.2点 | -9.7点 |
小石川 | 250点 | -2.8点 | -11.1点 |
武蔵 | 250点 | -2.8点 | -11.1点 |
成績については通知表(あゆみ)での「たいへんよい」 「よい」 「もうすこし」 で馴染みのある方も多いかもしれないので、評定1~3について下のようにとらえておきましょう。
- たいへんよい…評定3
- よい…評定2
- もうすこし…評定1
すべて評定3の場合はどの学校でももちろん満点となりますが、評定2や1があると各校の配点に従って減点される、と考えると良いでしょう。
この配点が学校によって異なるため、算出される報告書の得点が異なります。
例えば、総合得点1000点として考えたとき、1つの評定2に対して、都立立川国際では6.9点減点され、都立小石川では2.8点減点されます。
仮に「評定2が5個、その他は評定3」という成績だったとします。そのとき、報告書の点数は都立立川国際では215.5点、都立小石川では 236点となります。総合得点を1000点としたとき、2校とも報告書の点数は250点満点なのですが、20.5点の差が生じます。
このように、同じ成績でも報告書の点数は学校によって異なる、というわけです。
上の表を見てわかることは、たとえば、都立小石川、武蔵は 評定3と2の違いを重視していない、ということです。 評定2でも 評定3 でもOK、 評定1だけは差を付けよう、という考えのようです。
評定1はないけど、 評定3もあまりなく、 評定2が多い場合。この2校を選べばすべて 評定3の子とそれほど変わらない得点になる、というわけです。
一方で、 都立南多摩、三鷹、白鷗では 評定3と2の違いよりも2と1の違いの方が少ない配点となっています。 評定3を重視しているとも言えますが、 評定1が多い子にとっては狙いかもしれません。 評定2の子とそれほど変わらない得点ですむ、と考えられるからです。
また、単純に減点される点数の大きさで考えると、 評定1について都立富士や大泉では(13~14点)×( 評定1の個数)が減点されるため、 評定1が7個あると100点近く減点されます。1000点中100点近くマイナス状態からの競争と言えるので、かなり不利だと考えられます。
報告書の1点と適性検査の1点
さて、報告書の点数を考えるだけでは、どれほど合否に影響があるのかはわかりません。
もしも、適性検査で受検者のほとんどが満点だったとしたら、合否は報告書の点数で決まってしまうからです。
報告書で減点された1点が適性検査の1点と比べてどれほどの価値を持っているのかも重要、というわけです。
これを考えるためには適性検査の合格最低点と最高得点との点差がどの程度なのかがキーになるわけですが、これに対しては、正直、私も正確な答えを持っていません。
ですが、99%の自信を持って言えることは、学校の成績がどんなに悪くても、適性検査が満点であれば合格できる、ということです。
おそらく適性検査の合格最低点は7割以上ではない、と考えられるため、報告書で最低点の50点近くをとっても、合格する可能性は0にはならない、と思っています。
ですが、実際は適性検査で満点をとるのはかなり難しいため、現実問題として報告書の点数は高いに越したことはありません。
学校の成績を上げるのが簡単なのか、適性検査の得点を上げるのが簡単なのか、それはそれぞれのお子さんによって違うと思うので、バランスを見て対策していきましょう。
報告書の得点(学校の成績)を上げるために
以上から、学校の成績は良いに越したことはない、ということは言えます。
もし学校の成績が悪い場合、まだ間に合うならその原因を一度考えてみましょう。
テストの点数が悪いなら
適性検査の対策にもなるので積極的に勉強を行いましょう。
おすすめの勉強法でも紹介しましたが、進研ゼミの私立受験講座はおすすめです。
復習ではなく予習的内容なので、学校の勉強が分からない、ということはなくなります。
また、漢字や計算などもたくさん練習するので、学校のテスト対策にもなるでしょう。
参考記事 → 「 塾なしで都立中高一貫校に合格するための勉強法(おすすめ編) 」
苦手な科目、苦手なことがあるなら
個人的には苦手な科目の1つ2つは目をつぶっても良いと思います。(3つ4つでも…)
我が家の息子も4教科以外(特に音楽と図画工作)は苦手で、成績もよくありませんでした。
また、みんなの前で積極的に発言することも苦手です。
彼の成績表をみると、得意の教科の中でも苦手なことに関する観点や苦手な科目にはそれなりの評価がされていて、先生はしっかり見ているのだなと感じました。
すべてを頑張ると無理が祟ってどこかで歪みが生まれます。もし今勉強を頑張っているなら、なおさらです。
少しくらい悪い評価があっても仕方ない、という大らかな気持ちを持っても良いと思います。
とはいえ、なるべく評定1はとりたくないので、できなくてもふざけずに真面目に取り組むようには心がけてもらいましょう。
先生にもよるとは思いますが、頑張っている姿勢を見せれば、評定1にはならずにすむ気がします。
授業態度が悪いなら
授業態度が悪いなら、先生とそりが合わないなど、お子さんのストレスを知るきっかけになるかもしれません。
お子さんと少し話し合ってみるのも良いかと思います。
もし先生について不満があるとしても、先生の悪口はお子さんの前では絶対に言わないようにしましょう。保護者の態度は少なからずお子さんにもうつり、一層先生に対してネガティブな感情を持ってしまいます。本当に問題のある先生ならPTAを介す、直接先生と話し合う、他の先生に相談するなどしてお子さんの見えないところで解決した方が良いです。
また、家での勉強がうまく進んでいる場合は、学校の授業が簡単すぎて軽んじていることも考えられます。
学校の成績はテストの点数だけではありません。
意見交換や発言回数、参加意欲なども加味した総合的な評価ですので、そのことをお子さんに伝えましょう。合否に影響することも伝えても良いですね。
ただ、合格するために態度を改めようというのは少しもったいない気がします。
自分の意見を発言したり、他人の意見を聞いたり、先生の考えを聞いたりすることの重要性を伝えられるチャンスです。理解していることを人にわかるように説明したり、情報を分かち合ったり、他人の話を聞くということは、社会において本当に意味のあることです。
家庭での勉強では培えない部分ですので、その重要性をこの機会に伝えると良いと私は思います。
成績が悪い理由がわからないなら
あれこれ悩むよりも先生に直接お聞きするのが早いと思います。
どのようなところを改善すればいいのかを相談する姿勢でお話しすれば、答えて下さると思います。
まとめ
この記事では報告書について、お話してきました。これまでの情報をまとめると以下になります。
個人的には、報告書の点数の配点で志望校を変更するほどではない(総合得点を上げたいなら、適性検査の特色や適性検査の中の配点の違いの方がもっと影響が大きいと思います。)と考えます。
他の要素を考えた上で志望校を迷っているなら報告書の配点も考える、程度でよいのではないでしょうか。
受検に対してお子さんが前向きなら、あまり細かいことを気にせずに受検してみては?と私は思います。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
都立中高一貫校受検と学校の成績との関係について、少しでも参考になれたなら嬉しいです。
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