都立中高一貫校の適性検査と私立中学校の教科型試験は、問題や解答方法の傾向に違いがあります。
全体的な特徴については以前説明した通りです。
こちらをどうぞ→適性検査(都立中学受検)と教科型試験(私立中学受験)の勉強法はなぜ違うのか?
ここからは、さらに詳しく教科別に説明したいと思います。
今回は理科です。
この記事では理科分野での適性検査と教科型試験の違いを説明します。
知識をもとにした思考力が試される教科型試験
教科型試験の理科科目は、難しく感じる子が多い内容です。(正直大人でも得意でなければ難しいです…)
物理、化学、生物、地学の全ての分野を広く学び、細かい用語を答え、理科の法則を原理や公式は知らないまま、複雑な問題に答えます。
小学校では教科書の隅々まで用語を覚えたり、難しい計算問題などを勉強することはないため、初めて問題を見て解ける子はあまりいないでしょう。
ではどのように勉強するかというと、用語の意味を理解して暗記し、何度も問題を解いて解き方を理解し、覚え、計算します。
複雑な問題が出やすい分野について(豆電球の回線、てこや滑車の計算、月の満ち欠け、水溶液の中和、地層の読み取りなど)は頻出問題を集めた予想問題集がたくさんあるので、何度も解き、考え方を覚えて、少し応用されても解けるように何度も練習する、という勉強法が適しています。
とにかく暗記&苦手分野の問題の解き方を理解し、何度も解く、というのが対策だと思います。
読解力・考察力・実験力・計算力が試される適性検査
一方、適性検査は、理科分野でも知識は必要ありません。覚える公式などもありません。暗記は全く必要ありません。
理科分野でも、問題は長文で出題されます。
興味や疑問を持ち、○○について調べてみようという3人の会話形式で問題は構成されています。
会話の中で実験をすることになり、実験方法についていろいろと条件を話し合い、実験後の表やグラフや写真などを用いて示された実験結果をみて、さらに実験を重ねたり考察したりするわけです。
例えば、2019年度の問題では、でんぷん粉と水を混ぜてのりを作る際に、なるべく紙がはがれにくいのりを作るための水とでんぷん粉の割合を実験によって調べていきます。
全部で5回行う実験中、3回までの結果をもとに、4回目、5回目をどのように実験したらよいか、と考える問題です。
この分野でも、最も重要な力は読解力です。
会話のそこここに散りばめられているヒントや条件をしっかりと漏らさずに正確に読み取れれば、それほど難しくはない問題も多いです。
考察力も必要です。読みとった情報をもとに、与えられた条件下で最適な答えを考察します。
また、実験力も必要です。どのような実験を行えばいいかを考える記述問題も出題されるので、例えば、天秤のように2ヵ所に重りを垂らすと釣り合ったり釣り合わなかったりすること、水を熱すると熱した部分が上に上がろうとして熱している容器内で対流ができること、乾燥により水分は蒸発すること、他の条件を変えずに1つだけ条件を変えるとその条件が与える影響を比較できること(=対照実験)というような理科的な実験センスが必要です。
息子はろ紙に沁み込んだ水溶液の、固体だけ取り出すにはどうしたらよいかという状況で、「ろ紙を燃やす」と答えました…
正しくは、ろ紙を水で洗い流し、その水を蒸発皿にいれて熱し、水を蒸発させる、です。
このように、思い描いたプランを実践する場合にどのような手段が適しているかを思い付く実験力が必要です。
最後に、求め方がわかっても、面倒な計算が必要なこともありますので、計算力も必要です。
読む速さ、判断する速さ、計算する速さを鍛えるのも重要です。
おすすめは図鑑・学校での実験・Eテレ・料理など +過去問。
理科分野においては教科型試験と適性検査の差は非常に大きく、教科型試験の理科分野の暗記量は膨大なので、適性検査に焦点を絞った勉強は教科型試験よりかなり楽ではあります。
けれども、暗記に頼れない分、なかなか対策がとりにくく、能力や成長が見えにくいのが辛くもあります。
適性検査が扱っている理科の現象自体は高校で学ぶものも多く(浸透圧、放物運動、触媒など…)、知識では補いきれません。
実験のようなことに興味を持ち、あれこれと仮説や疑問を持ちながら体験するのが一番です。料理や簡単な実験を実際にやってみるのが一番ですが、実験についての図鑑、考えることを促すEテレの番組などを見るのもおすすめです。
息子は実験や料理が好きではなく、なかなかそのような体験を促すことができなかったので、国語や算数と同じく進研ゼミ中学受験講座の理科を行いました。
問題として共通する部分はほとんどありませんが、例えば、「川のはたらきの浸食、運搬、堆積」を学ぶことにより、水の流れは重い固体も運べること、流速が落ちると大きな石は運べなくなることなどの理科的な現象を、知ることにより想像できるようになります。
また、実験例も多く登場するので、実験器具の特徴や実験時の注意点からも実験のセンスを獲得できるのは有意義です。
問題を制作して下さっている方の考察力を試したいという意図とは反する気がしますが、考察力が乏しい場合は知識でカバーできることもまあまああると個人的には思っています。
また、小学生のうちに理科分野をしっかりと勉強していることは、中学後の勉強には非常に役に立ちます。
とはいえ、教科型試験の勉強は理科分野では適性検査対策にはあまり適していないので、適性検査対策としては、過去問を解きましょう。
我が家では過去問は、Z会公立中高一貫校適性検査5年生/6年生、公立中高一貫校適性検査問題集全国版(銀本)、過去問をまとめた問題集、志望校の過去問に取り組みました。
当初はこんなに真剣に受検対策をするつもりはなく(無理なく勉強を続けて受けるだけ受けてみるつもりでした)Z会の講座だけでもいいかなぁと思っていたのですが、直前(小6の11月)で息子がやる気になり、もっと問題を解きたいと言うのでどんどん増えました。
正直、6年生で過去問の問題集を買ってどんどん取り組むつもりなら、重なる部分も多いので6年生のZ会の講座は受けなくても良かったような気がします。
5年生の時に、適性検査ってどんな感じかなぁと知りたい場合は、進研ゼミと両立できる量としてZ会の講座はちょうどいいと思います。
時期としては6年生からで十分だと個人的には思います。我が家は小学6年生の9月ごろから、過去問に取り組みましたが、もう少し余裕を持って取り組めた方が良かったと思います。
過去問をまとめた問題集は「考察力で合格!」をおすすめします。
この一冊で都立の理科分野の傾向や答え方の特徴を掴むことができます。
ただ1つ、問題と解答が分かれていず、解答が問題の続きに書かれているために、あらかじめ隠して解かないと解答が見えてしまうのがとても不便です。(マステで紙を貼って隠してました)
おすすめの順番としては、
Z会公立中高一貫校適性検査5年生(5年生から少しやってみたいなら)
→考察力で合格!→志望校の過去問(近年の分を残す)→銀本→志望校の過去問(近年の分)
です。
気を付けたいのは、問題集は過去問を集めた物なので、志望校の過去問も含まれていることです。
志望校の過去問を後で時間を計って通して取り組みたい場合は、志望校の問題は飛ばして解きましょう。
(都立の共同問題も飛ばしましょう。)
Z会の公式ホームページのリンクを張っておきます。具体的な内容についてはこちらのリンク先の情報を確認してみてください。
資料請求用のリンクも張っておきます。ご興味ある方は下記リンクから申し込みしてください。
※資料請求するだけでもらえる「おためし教材」もあります。
まとめ
以上、理科分野について教科型試験と適性検査の違いや対策についてまとめてみました。
最後までお読みいただきありがとうございました。少しでもご参考になれば嬉しいです。
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